商品を輸入するときには、航空便か船便を使うことになりますが、どちらを使うべきなのでしょうか。
航空便と船便は、一概にどちらの方が優れているかということはありません。それぞれを正しく使い分けていく必要があります。
航空便と船便を様々な観点から比較し、パターンごとにどのように使い分けていくべきかについて論じていきます。
航空便
航空便のメリット
航空便のメリットは、届くまでの早さ、これに尽きます。中国→日本の場合は、通関など諸々含めて、5-10日程度で届きます。だいたい1週間で届くと見積もってもらってよいでしょう。
単純な値段だけで言うとほとんど船便の方が安くなるのですが、届くスピードの違いにより、のちに詳しく説明するように、キャッシュフローなどの点で航空便を選んだ方がいいケースも出てきます。
航空便の値段
発送元にも依りますが、代行業者を使う場合はだいたい以下のような相場です。パートナーを使う場合はこれよりやや高くなると考えてよいでしょう。
重量 | 運賃 |
1~50kg | 20元/kg |
51~100kg | 18元/kg |
101~200kg | 16元/kg |
201kg~ | 14元/kg |
ただし、この場合の重量は、実重量か容積重量の重いほうで計算されます。容積重量とは、
容積重量(kg)=縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷5000(もしくは6000)(㎤/kg)
で計算される重量のことです。
例えば、10kg、50(cm)×50(cm)×50(cm)の荷物の場合、容積重量は25kgとなります。この場合重いほうの25kgが重量として採用されます。
船便
船便のメリット
安い
船便の一番のメリットは安いことです。後述しますが、コンテナを借りて送る方法では航空便と比べて値段をかなり抑えることができます。
初心者の場合は航空便を使っているケースが多いので、船便を使うだけで価格面でかなり優位に立つことができることもあります。
値段を抑えることができればそれだけ商品の利益率を上げることができます。航空便ではあまり利益が出ない商品の場合も船便を使うことで利益を出すことができる場合があります。
また、仕入れ値を抑えることで商品の競争力が上がり、商品を安定して長期的に販売し続けることができます。
航空便で送れない物が送れる
電池や液体など航空便では送れないけど、船便では送れるものがあります。
中級者以下の場合はこのような商品を避ける傾向にあるので、選択肢として持っているかどうかだけで商品選択の幅が広がります。
FCL
FCLとは
FCLとは、Full Container Loadの略で、上図のように、コンテナを1つ貸し切ってそれをそのまま配送先まで送る方法です。
当然この方法ではコンテナ1つを借りるだけの荷物量が必要です。ただしその分メリットも多く、かなり安く送ることができます。
また、コンテナの荷物を振り分ける必要がないので、後述のLCLよりは早く届けることができます。だいたい10-15日程度で届きます。
FCLの値段
FCLには、海上運賃に加え、目的地から港への運賃(中国、日本両方)、積み上げ積み下ろし費用、THC(港でコンテナを所定の位置まで運ぶ費用)、その他諸費用と複数の項目があります。これらをすべて正確に計算するのは至難の業です。
更に、税関に引っかかってしまった場合などは更にコストがかかってしまいます。また、同じ中国でも日本との距離によって費用は違ってきますし、工場と港、港と配送先の距離によっても違います。
そのため実際に使用する際には概算でよいので各々で計算してみるようにしてください。ここではだいたいの目安を示しておきます。
20フィート | 40フィート |
約25万円 | 約40万円 |
20フィートは約30㎥なので、先ほどの容積重量に直すと、1kg当たり約2.5元ほどになります。航空便に比べると安いなんてもんじゃないですね。ただし、コンテナに空間なく詰め込むのは難しく、全体の10%程度の空間はできてしまうことにご注意ください。
LCL
LCLとは
LCLとは、Less than Container Loadの略で、混載便とも呼ばれます。上図のように、複数の荷主の荷物を合わせて一つのコンテナに詰め、それを船で運んだあと再び振り分け、各配送先まで送る方法です。
LCLの場合は、荷物がコンテナの量に満たない場合でも船便を利用することができるというメリットがあります。
ただし、航空便よりは安いですがFCLよりは高く、また港で荷物を振り分ける手間があることからFCLよりも届くまでに時間がかかってしまいます。20-30日程度かかります。
LCLの値段
1㎥あたりだいたい800-1000元で送ることができます。これは容積重量に直すと、1kg当たり、4-5元になります。こちらもFCLほどではないですが、航空便と比べるとかなり安いです。
船便、航空便の比較
キャッシュフローについての考察
以上を踏まえて、じゃあ安いから常に船便を使った方がいいと考えるのはナンセンスです。
それは、キャッシュフローの問題があるからです。
例えば、航空便で送る際のリードタイム(製造期間+配送期間)が1か月、船便(混載便)で送る際の期間が2か月とします。
この場合、航空便で送る際には、安全在庫(販売数の変動があっても在庫切れを起こさないようにするための余分の在庫)を度外視すると、残り在庫が1カ月分の時に発注をする必要があります。船便で送る場合、残り在庫が2カ月分の時に1カ月分の在庫を発注する必要があります。
ただし、送料の違いからこの両者の1カ月分の値段は違うので、それについても考える必要があります。製造が1個あたり500円、航空便の送料が1個60円、船便の送料が1個20円とします。航空便で送った時の利益が1個560円としたとき、船便で送った時の利益が600円となります。この商品が月に500個売れるとします(簡単のため、関税などは考えないこととします。)
この時、前者の1カ月分の在庫値段は28万円、後者の1カ月分の在庫値段は26万円です。つまり、後者の場合は余分に24万円分の在庫を抱える必要があります。そして前者の場合の月の利益額は28万円、後者の場合の利益額は30万円と、利益額は月にたったの2万円しか変わらないのです。24万円分の在庫を抱えるメリットがたったの2万円ならば、多少送料が高くても他の商品の仕入れに回す方がメリットが大きいと考えるのが妥当です。
このように、船便の方が送料がかなり安い場合でも、実際には航空便を利用したほうがいいケースも多いのです。
船便を利用したほうがいいケース
先ほど説明したように安いからと言って必ずしも船便がいいとは限らないのです。
船便を利用する方がメリットが大きいケースは以下の4つです。
- 航空便で送れない
- 物量が多い
- 密度が大きい
- 割引率が大きい
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
航空便で送れない
航空便で送れない電池や液体などの商材を扱いたい場合は、船便を利用する必要があります。
これは当たり前ですね。
物量が多い
物量が多く、FCLで発送できる場合には、ほとんど船便で送った方がよいです。FCLの場合は届くまでの期間が航空便とそこまで大きく差がない一方、値段は大幅に安いからです。
この場合はややキャッシュフローの面では航空便に軍配が上がりますが、コストを下げられるメリットの方が大きいです。
キャッシュフローを有利にするためには、一部は航空便で発送するという方法もあります。実際にここまでやる人は見たことがありませんが、在庫切れが懸念される場合には有効です。
密度が大きい
容積に比べて実重量が大きいような商品は、航空便で送るとかなりコストが大きくなってしまうので、船便で送る方がいいです。
先ほどの「キャッシュフローについての考察」で述べたケースで何故船便の方が不利になってしまったかというと、製造コストに対して送料の比率が低いので、そこを下げてもあまり旨味がなかったからです。逆に製造コストに対して送料が大きいような商品の場合は、船便にすることで大幅に仕入れ値(製造コスト+送料)を削減することができます。
このような場合は混載便であっても船便を活用する方がよいでしょう。
割引率が大きい
例えば、無理矢理FCLで送るために月間販売個数の4倍の在庫を仕入れるというような行為が明らかに損だということはここまで読んできた方には分かっていただけるかと思います。
ただし、このような販売個数以上の大量仕入れが有利になるパターンが、商品の割引率が大きい時です。
ある商品は500個仕入れた時は1個500円で、2000個仕入れた場合には50%割引の250円で購入できるとします。航空便の送料が1個60円、船便(FCL)の送料が1個10円とします。この商品が月に500個売れるとします。航空便で送った時の利益が1個560円としたとき、船便で送った時の利益は860円となります。
この場合の投下資本利益率(ROI)は、前者(航空便)で100%、後者(船便)で330%となります。
1商品当たりの利益率では圧倒的に後者が有利です。
ただし投資した金額を回収するまでの期間が短いと、その資金を再投資して更に資金を増やすという複利の効果が得られるので、その分有利になります。
後者の場合は、4か月で資金を回収でき、ROIは330%です。
前者の場合は、資金を回収でき、1か月目で稼いだ資金を再投資して、それを2か月目、3か月目、4か月目と繰り返すことで複利の効果を得ることができます。1か月のROIが100%の時、4か月のROIは800%になります。
ただし、これは滞留在庫分を考慮していないです。例えば、リードタイムが1か月の場合は仕入れの際に1カ月分の在庫を持っていないといけません。このようにリードタイムがある場合、資金を丸々利益を生むような再投資に回すことはできないのです。更に安全在庫分なども考慮すると更にROIを下降補正して考える必要があります。
実際このようなケースではどちらが得か判断することは難しいです。この例の場合も簡単のために色々な項目を省略していますが、実際の場合は更に考えるべき項目が多いです。
先ほどの数字上の計算以外にも、後者の場合、仕入れ値が下がることで競争力が上がる、またそれにより商品としての寿命が延び長期的に稼ぐことができる、というメリットがあります。同じ商品で長期的に稼ぐことができると、それだけ新商品開発の労力やコストを抑えることができ、また安定して稼ぐこともできます。
現実ではこのようなケースでは、たいてい後者(船便)の方を選択したほうが有利になります。
まとめ
以上のように、航空便、船便はそれぞれのメリットがあり、うまく使い分ける必要があります。
最後の項でも論じたように、どちらが得かを1つの観点だけから判断するのは難しいです。実際に判断する際には様々なことを考慮に入れて複数の観点から決めるべきです。
ある程度でよいのでこのように計算してから航空便を使うか、それとも船便を使うか判断していくようにしてください。